基本ルール
よーいドンでスタートからゴールまで駆け抜けるスピードは競技によっては女子でも最大70km/hほど出ます。
2m満たないボードに圧をかけてしならせ、たった1本の数ミリの金具(エッジ)の上に体重を預けて氷のような堅さのコースを駆け抜ける、緊張感のあるレースです。
競技の種目
スノーボードアルペンには、3つの種目があります。
旗と旗の間の距離が短いSL、長いGS、男女ペアを組んでリレー形式で競うチーム戦です。
ワールドカップではパラレルと呼ばれる、平行に旗をセットした2コースが用意されるため、
GSは PGS=パラレルジャイアントスラローム、
PSLは PSL=パラレルスラロームと呼ばれる2種目がツアー中、各5、6戦ほど開催されます。
主にはオーストリア・ドイツ・スイス・イタリア・スロベニアといったヨーロッパが中心ですが、北米やアジアでも開催される年があります。
滑走道具
スノーボードの中でもアルペンをアルペンらしくしているのは、滑走用品です。
競技種目によって2つの長さのアルペンボードを使い分け、ハードブーツを履く、という点です。
アルペンボードはノーズ(先端)はラウンドしていて、テール(後ろ)は直線になっています。
フリースタイルボードより固く、張りが強いアルペンボードは速く正確に滑ることを目的に設計から素材まで研究され、開発されています。
身長や脚力に合わせて、各ボードの長さを選びます。
周囲をエッジと呼ばれる刃が取り囲んでいます。氷のような急斜面を時速70km/hほどの中で1本のエッジに身体を預けて滑るので、エッジの手入れが重要です。
バインディング
ボード+プレートとブーツ(身体)をつなぎ止める命綱。
カントというパーツを組み合わせたり板に取り付ける角度や高さ等を調整して、自分と滑りに最も合うセッティングを模索します。
ハードブーツ
アルペンの一番の特徴はハードブーツを使うこと。
身体が生み出すパワーをボードへしっかり伝えます。タンや後ろのばねなどパーツやインナー、インソールを変えて自分にあうフィッティングを探します。
プレート
ボードに重ねて取り付けます。
雪面の凹凸が生む振動を抑制して滑りを安定させてくれる他、ボードの性能を引き出します。
大会の流れと勝敗
「先にゴールしたら勝ち。」とてもシンプルで、初めて見る人でも勝敗がはっきりわかって盛り上がれる!
私がスノーボードでレースを選んだ理由の一つでもあります。
- ほとんどの場合、男女同日・同コースで開催します。
- 女子・予選1本目全員 → 男子・予選1本目全員 → 女子・予選2本目・・・というふうに、男女交互に同じコースを滑ります。
- 予選の上位16名が決勝トーナメントへ進出。そこからが勝負です!
大会に出場する選手の中で上位16名(直近発表ランキング)の選手によるビブドローがあり、16名の予選1本目で滑るコースと出走順が決まります。
17位以降の選手は、ランキング上位順に二つのコースに分かれて滑ることになります。
ビブが配られ、全体のスタートリストが決まります。スノーボードアルペンでは男女ともに50-60名ほどが、WCとその国ごと決められた出場要件をクリアして出場します。
出走前に一定の時間内で「インスペクション」という、コース下見をすることができます。このときに、旗のセットやバーンの起伏などを覚え、自分が滑るラインを思い描きます。2本目ではどこが荒れそうか考えたり、私はコースの周囲もよく見て目印を作ったりもします。
予選は二本合計タイムが速いことが目標なので、どちらが先着するかは関係ありません。
- 全員滑ります。
スタートリスト通り各コースの1番走者から順に、2名同時に滑ってタイム計測します。
- 青コースの上位16名・赤コースの上位16名が、コースを入れ替えて予選2本目を滑ります。
- 1番出走は、青コース16位の選手と、赤コース16位の選手。最後は 各コースで1本目にラップタイプ(1番のタイム)を出した選手です。
予選通過のランキングによって、トーナメント位置は決まっています。
- 予選順位の良いほうが、赤・青どちらのコースを滑るか選べます。
- 予選と異なり、決勝はタイムは関係なく、先にゴールした選手が勝ち上がります。
- 0.01秒まで同着の場合は、予選通過順位の高い方が勝ち上がりますが、BIGFinalとSmallFinalだけは、同着の場合、高い順位を分け合います。(1位2名・3位2名)
●均一ではない斜面の斜度の違いやうねり
●日陰などの部分的な堅さ
●選手が作った滑り跡
これらの影響で、決勝の頃にはコースの良し悪しの差が出ます。
滑る直前に選べるので、自分の前のレースまでよく見て、コースを見定めます。勝ち上がった先を見越して良いコースをあえて選ばず、不利なコースを選んで滑っておくことも戦術です。
選べない選手は、どちらのコースを滑るのか直前までわかりません。
チームワーク
ランキング
ワールドカップに出場した選手には、大会毎その順位に応じた「ワールドカップポイント」が与えられます。
また、国際スキー連盟(FIS)公式戦に与えられるポイント「FISポイント」も与えられます。(大会の規模や出場者の保有するポイントによって同じ順位でも得られるポイントが異なります。)
シーズン最終戦が終わり、このポイントの累計でポイントランキングの最終版が発表されます。
PGSのランキング、PSLのランキング、総合ポイントのランキングと3つのランキングがあり、ワールドカップポイントリストでは、総合ポイント1位の選手に大きなトロフィー(クリスタルグローブ)とクリスタルメダルが、種目別のランキング1位にも小さなトロフィー(クリスタルグローブ)クリスタルメダルが授与され、各リストの2位と3位にもメダルのサイドカラーが異なるクリスタルメダルが授与されます。
オリンピックで金メダルを獲得することは多くの選手の目標でもありますが、この年間結果を総合した王者のクリスタルグローブを獲得することもまた、選手の目標でもあります。
ワールカップはツアー形式なので、1戦1戦の結果も重要で、その積み上げが最終ランキングに反映されます。4ヶ月にわたるツアー期間のピーキングや、最終的な目標、五輪を4年目に据えた4年間の計画を元に、トレーニングや雪上練習をプランします。
自然の恩恵で成り立つ競技
スノーボードアルペンは練習でも大会でも雪上に長い距離を確保して取り組む自然に頼った競技です。
温暖化で夏の氷河が溶け、夏期に練習ができない、雪不足で大会ができない、など、その年の天候や長期的な気候変動が競技環境に大きく影響します。
WCなどの一線で競技ができる期間は短くとも、私は雪山が大好きで、鼻が痛くなるような冬のつんとした空気感の中を疾走するスノーボードが大好きなことは変わらないと思います。
この雪山の環境が未来に続いていくよう、環境を守っていく・よりよくしていく活動に取り組むとともに、多くの方々と一緒に考え、取り組んで行けたらと願っています。